Ryzen5950XとWindows11でDAWに適した環境を探る

自分、自作PC大好き人間(しかしあまり詳しくはない)なもんで、先日仕事に少し区切りがついたのを機にメインPCをAMDのRyzen 9 5950Xに載せ替え、ついでにWindowsも11にしてみました。
以前たわむれに「5950Xが7万切ったらさすがに買うわw」と価格コムで通知設定していたら5/中旬くらいだったかホントに7万円を切って通知が来たのでびっくりして買ってしまいました…Intelの12900Kも魅力的でしたがちょっと空冷では厳しそうだったので、空冷大好き人間でもある私は思いきってAMD環境にしてみた次第。秋頃に出るという次世代のRyzen7000はDDR5が当分下がらなさそうなので除外としました。負け惜しみではないです😤

さて、オーディオ制作に適したPCにするなら「とにかく省電力機能を切れ」ってのが業界の習わし…だったのですが、Ryzen環境だとそのあたり検索してもあまり出てきません。まぁ最近のCPUならもうBIOSいじったりしなくいいんだろうなぁと思いつつ、念のため省電力がオンの状態でも問題ないかどうか簡単なテストをしてみました。

最初に結論

CPUの省電力機能は切らなくてOK!
デフォルト環境でもDAW(REAPER)のプレイバックでドロップアウトしたりレンダリング結果にノイズが乗ったりはしませんでした。しかしここで終わってしまっては私の安っぽい自己顕示欲が満たされないのでどんどん書いてゆきます。

PC構成

CPU AMD Ryzen 9 5950X
マザーボード ASRock X570 Taichi
CPUクーラー Deepcool AK620
GPU GeForce RTX 3060
RAM DDR4-3200 64GB(定格)
OS Windows 11 Pro
オーディオI/F RME Fireface 802
MOTU M2(サブ)

マザーボードは普段だとSteel Legendクラスを買いますが今回は金額差が小さかったのでちょっと奮発しました。
それと、ASRockはUAD-2のPCIeボード(Quad以下)に正式対応してくれているのも大きいです。おそらく各社BIOSをアップデートすれば動くんでしょうけどASRockは明記されているので安心。今回組んだ環境でも問題なく動いています。

目標とするPCの方向性

  • 安定度重視(レンダリングで音が飛んだりクラックリングしたりは絶対にイヤ)
  • 安定してくれるなら消費電力が上がっても構わない
  • とはいえ仕事せずにネットを見ている時間が長いから消費電力が低いに越したことはない
  • オーディオ以外にも使うのである程度ソフトが常駐してても許してほしい
  • 空冷
  • 静音にはこだわらない
  • OSの視覚効果はけっこう好きなので切らずに使いたい

BIOS設定(UEFIだっけ)

PCを組んだらまずC-StateとEIST(Speed Step)をDisableにするのが結構有名だと思います。実際、省電力機能によりクロックが下がる環境だとプレイバック時にドロップアウトしやすかったりレンダリングでノイズが乗ったりした経験があるので、私も長いことこの機能を切ってきました。ついでにオンボードのオーディオも。

しかし最近のCPUは省電力やブーストクロックやらが複雑化&最適化されてどこをいじればいいのかよく分かりません…RyzenだとIntelと用語も違いますし。全体的に「こっちでうまいことやっから勝手にいじんじゃねーよ」という強い意志を感じます。なので、とりあえず分かりやすかったGlobal C-Stateのオンオフ、そして今までの定番だったクロック固定状態を試しました。

常駐ソフト

特殊な環境でしか安定しないってのも困るので、普段使っている以下のソフトを常駐させた状態でテストしました。

  • thilmera7(フレーム速度1秒)
  • CLaunch
  • RMEのミキサーを表示(TotalMix)
  • LINE PC版
  • Everything
  • TourBoxコンソール(左手デバイス)
  • AutoHotKey3つ(マウスジェスチャー、ClipboardHistory、自作スクリプト)
  • 付箋(Windows標準のやつ)

レンダリング速度

先日作ったホームメイドスイートピー主題歌の2ミックスを各種環境で最高速レンダリングしました。
曲の長さは4分少々、バッファは256、トラック数はステレオで約60、プラグインはVSTエフェクトが約100個刺さっています。ちなみに完成状態だと負荷が低かったので、重そうなコンプやチャンネルストリップを適当に20個くらい足したりマスターにIKのLurssen Mastering Consoleを挿したりしましたがまだ全然余裕。すげーな5950X。メニーコアを崇めよ。なおネイティブ環境だけで試したかったのでDSPのUADプラグインは削除しました。

C-StateとWindowsの電源オプションで4パターン

C-State「Enable」 C-State「Disable」
バランス 1分40秒(2.5x) 1分49秒(2.3x)
高パフォーマンス 1分50秒(2.3x) 1分51秒(2.2x)

んん、たぶん左上の1分40秒は何か別の要因で早く終わったように思います。
RyzenはWindowsの電源オプションで「バランス」を使わないとクロック制御が悪くなるという情報をどこかで見た覚えがあり、確かに「高パフォーマンス」ではレンダリング速度が落ちていますがまぁ誤差ですね。PCやキャッシュの状態によって5~10秒くらいの違いが出そうなので、C-Stateと電源オプションはどれを使ってもそんなに変わらないかな~といった印象です。しかしアイドル時のCPUパッケージ消費電力はC-State「Enable」のほうが7~8ワット下がっていたので、じゃあ左上のデフォルト環境でいいじゃんと。

本当はもっと高負荷のプロジェクトを使い何回もレンダリングして平均を取ったり、PCの状態をできるだけ同じにしたりしないといけないのでしょうね…今回は省電力が影響するか否かのテストなので追求しません。ベンチマーカーの人達はすげーなぁ…

CPU Ratio x34固定

  • 2分26秒(1.7x)

x34固定は5950Xのベースクロック「3.4GHz」からクロックが上がらないので当然ながら遅くなりますがCPU温度も全然上がりません。まぁこれだと5950X買った意味がなさ過ぎですけど…夏にエアコン壊れた時用?

CPU Ratio x42固定

  • 1分49秒(2.3x)

5950Xのクロックアップをざっと検索したところ、全コア固定はx43までという情報がいくつかあったのでx42で試してみました。Intelだと全コア時のブーストクロックが仕様に書いてあったりするのでその数字に固定して使うのが定番だったわけです。

見た感じ温度上昇はそんなでもなく、アイドル時の消費電力もデフォルト環境と変わらないので意外と悪くないかもしれません。ですが、もっと重いプロジェクトだと踏ん張れなくなりそうですし、せっかく4.9GHzまで回る5950Xがもったいない気もします。

レンダリングエラー等は発生せず

レンダリングしたWAVEファイルを全てきっちり聞いたわけではないですが、飛ばしながら聞きつつ波形とスペクトログラムを目視して音飛びやノイズがないことを確認しました。どの環境でもDAW操作中において突っかかりなどは無く、操作感も違いは感じませんでした。
レンダリング中のCPU温度は70度前後でサーマルスロットリングは発生せず(x34固定は冷え冷え)。室温は26度くらい。AK620はファンの音も気にならなくて大変良いです。Noctuaより安いしね。

そんなわけで、「C-State Enable」「電源オプション:バランス」「クロックのブーストや電圧周りは全てオート(デフォルト)」であれば、レンダリングは速くてアイドル時の消費電力は低くて高負荷時には踏ん張ってくれそうなので、個人的にはこれがベストだなーと思います。

マルチコアちゃんと使ってくれてるー?


あぁ~(うっとり)
今回のテストで使用した2ミックスのプロジェクトです。負荷の差はあれど全てのコアに割り振られています。頭4つの負荷が高いのはVSTが直列にたくさん挿さっているトラック(バスやマスター)の影響かな。


こちらは作曲時のVSTiがメインのプロジェクト。VSTiなら基本1トラックに1本なのでいい具合に負荷分散されているように見えます。


アイドル時はこんな。すーんとしている。

USB周り

RyzenはIntelよりUSB機器との相性が出やすいというウワサがありちょっとドキドキしていましたが現状トラブルは出ておりません。安定感あります。オーディオインターフェースなどの重要な機器をマザー直のUSB端子に繋げれば大丈夫なのではないでしょうか。

USB機器の接続はこんな状態です。

  • マザーのUSB3
    • Fireface802(オーディオI/F)
    • MOTU M2(オーディオI/F)
    • UAD-2 Satellite
  • マザーのUSB2
    • Steinberg Key(そろそろ廃止か…)
    • WavesとPlugin Alliance用のUSBドングル

ほかにもありますけどオーディオに絡みそうなのはこのくらいかなぁ🤔

ベンダーさんが公開しているWindows設定集

Steinberg(Windows: How to set-up and optimize a Digital Audio Workstation)

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Native Instruments(オーディオ処理のためのWindows最適化)

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SONICWIRE Blog

【DTMに最適なOS設定】パフォーマンスの向上/トラブルを回避する設定を紹介 Windows編 | SONICWIRE BLOG
マシンパフォーマンスを引き出したり、安定した動作のためのWindowsの設定についてご紹介します。 本記事では

Ableton(Windowsを音声処理に適した設定にする)

Just a moment...

オーディオインターフェースや鍵盤等、オーディオ制作環境にはUSB機器が増えがちなので、電源オプションの詳細設定でUSBサスペンドを無効にするのと、デバイスマネージャーでUSBハブの省電力を切るのは重要かと思います。忘れずに設定しておきましょう。

プロセッサの電源管理→最小のプロセッサの状態は100%を推奨するケースが多いですが、Ryzenのデスクトップ環境だとだとバランス設定(最小0%)でも良さそうです。

最後に

5900Xでも十分だったわ…

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