Native InstrumentsのMIDI鍵盤シリーズを使われている方は多いのではないでしょうか。
かくいう私もKontrol SシリーズのMK2を愛用していたのですが、2024年のブラックフライデーで「なんか買わなきゃ…」みたいな焦燥感に駆られてヤフショでMK3鍵盤に買い換えました。
MK3シリーズからはKomplete Kontrolという言わばWrapperに当たるプラグインを介さなくてもKontaktとダイレクトに繋がってくれる機能が搭載されまして、さらにこのKomplete Kontrolは当時REAPERと相性が悪かったので「MK3を買えば脱Komplete Kontrolできるに違いない…」という期待もあって導入した次第です。
その後、Komplete Kontrolのv3がREAPERでフリーズしてしまうバグは、2025/3/27のアップデート(v3.4.1)でついに解消されました。(OA様、メールフォームからの情報提供感謝🙇)
v3が公開されたのが2023年10月くらいですから1年半近くかかりましたか…正直もう放置だろうなぁと諦めていたので驚きました。
相性問題は解消されたものの、REAPERは残念ながらNative Instruments社が正式にサポートしていないので、ホストインテグレーションを有効化するには有志の方による拡張機能が必要になります。
今回はホストインテグレーション+アルファの機能を提供してくれる拡張機能「DrivenByMoss 4 Reaper」をご紹介しつつ、Kontrol SシリーズとREAPERの対応状況などをまとめてまいります。
登場キャラ
Kontrolって付くのがたくさんいて混乱するので一覧にしてみます。
Kontrol Sシリーズ
Native Instruments社製のMIDI鍵盤
https://ni-japan.jp/products/kontrol-s49-s61-s88
MK2鍵盤
Sシリーズで1世代前のMIDI鍵盤。液晶が2つに分かれている。探せばまだ買えるかも(2025/4現在)
MK3鍵盤
Sシリーズで現行のMIDI鍵盤。液晶が1枚になりスタンドアロン機能も向上している。
Komplete Kontrol
Native Instruments社製のVST、AU、AAXプラグイン。Sシリーズ鍵盤とのコネクション機能や、他社プラグインのWrapper機能を有する。
https://www.native-instruments.com/jp/products/komplete/bundles/komplete-kontrol/
Komplete Kontrol v2
1代前のプラグイン。REAPERとの相性は○。サポートが終了しているので手動でインストーラーをダウンロードする必要がある。
Komplete Kontrol v3
現行のプラグイン。REAPERとの相性は×だったが2025/3/27のアップデートで解消された。Native Accessからインストール。
reaKontrol
REAPERの拡張機能。1世代前までのSシリーズ鍵盤に対応。
https://blueberry-yogurt.com/?p=1464(紹介記事)
DrivenByMoss 4 Reaper
REAPERの拡張機能。Sシリーズ鍵盤のMK1以降に対応(その他、様々なMIDIコンにも対応)
https://forum.cockos.com/showthread.php?t=206610
Kontrol SシリーズとREAPERの現状(2025/4月現在)
以前reaKontrolという拡張機能をご紹介しましたが、これはSシリーズのMK2鍵盤までしか(おそらく)対応しておりません。なのでMK3鍵盤でホストインテグレーション機能を使うにはDrivenByMoss 4 Reaperのインストールが必須となります。
REAPERでSシリーズMK3鍵盤+拡張機能を使う
- 拡張機能はDrivenByMoss 4 Reaperのみ対応
- トランスポート系のボタンは全て動作する
- Kontakt v7、v8は挿すだけでダイレクトコネクションが機能する(Kontaktを挿したトラックを選択するとツマミのマッピングやライトガイドが自動で切り替わる)
- KompleteKontrol v3内でNKSに対応したプラグインをロードすればMK3鍵盤からプラグインを操作できる
REAPERでSシリーズMK2鍵盤+拡張機能を使う
- Komplete Kontrol v2を使う場合、拡張機能はreaKontrol、DrivenByMoss 4 Reaper どちらでもOK
- Komplete Kontrol v3を使う場合、拡張機能はDrivenByMoss 4 ReaperはOK、reaKontrolはテストされていないので動くか不明
- トランスポート系のボタンは全て動作する
- Kontakt単独でのダイレクトコネクションはMK3鍵盤以降のみ対応なので動作しない
簡単にまとめ
現時点ではMK2鍵盤、MK3鍵盤どちらのユーザーもKomplete Kontrol v3+DrivenByMoss 4 Reaperの環境をおすすめします。
DrivenByMoss 4 Reaperの概要
前置きが長くなりましたがここからが本題です。
DrivenByMoss 4 ReaperはJürgen Moßgraber様作、REAPERにて様々なハードウェアコントローラをサポートするための拡張機能です。
Native Instruments社でいうところのホストインテグレーション機能になるのでしょうか。
例えばNative InstrumentsのMK3鍵盤はREAPERだと正式にサポートされていないので、そのままだと自動でKontaktの画面に移ってくれないどころかトランスポートボタンなども機能しません。が、この拡張機能をインストールするとサポートされているDAWとだいたい同じように動いてくれて、さらに独自の便利機能も搭載されています。
基本はBitwig用に開発されているソフトウェアなのでREAPERでは一部機能が省かれているようですがそれでも十分高機能です。
インストール
ダウンロード
ReaPackには対応しておりませんので、公式サイトからファイルをダウンロードします。
https://www.mossgrabers.de/Software/Reaper/Reaper.html

展開場所
REAPERのリソースフォルダ > UserPluginsフォルダにダウンロードしたファイルを置いて展開します。この拡張機能専用のフォルダを作ってその中に展開すると動かないのでご注意ください。
Windowsの場合、展開後のフォルダ内はこのようになります。(赤枠内が今回の拡張機能)

展開後に一度REAPERを再起動したほうがいいかもしれません。
コントロールサーフェス設定
REAPERの環境設定から「コントロール/OSC/web」を開き、DrivenByMoss4Reaperを追加します。

追加された項目をダブルクリック、または選択した状態で「編集」ボタンを押すとコントロールサーフェス設定ウィンドウが出てきます。その中の「Configure」ボタンを押すと拡張機能の設定画面が表示されます。もしくは「DrivenByMoss: Open the configuration window.」というアクションからも表示できます。

拡張機能をインストールすると以下4つのアクションが追加されます。
- DrivenByMoss: Open the configuration window.(設定画面を表示)
- DrivenByMoss: Open the parameter settings window.(プラグインパラメータの設定画面を表示)
- DrivenByMoss: Open the project settings window.(Project設定画面を表示)
- DrivenByMoss: Restart all controllers.(拡張機能をリスタート)
デバイスを追加
拡張機能の設定画面右側の「Add」ボタンからお持ちのデバイスを追加します。

デバイス設定
私が使用しているMK3鍵盤の設定内容を項目ごとにご紹介します。

Midi Ports
「Rescan Midi Devices」を押すととりあえず自動でポートを割り当ててくれた覚えがあります。
マニュアルによると、拡張機能に割り当てたMIDIデバイスのポートは、REAPER環境設定のMIDIデバイスのところでは全てオフにするのが推奨の設定です。MIDI入力をオフにしても拡張機能が動いていればちゃんとMIDIレコーディングできるのでご安心を。
しかし私の環境ではMIDI IN2とMIDI IN3を拡張機能に割り当てて、MIDI IN1は通常のMIDI入力デバイスでオンにしています…しばらく気付かずにこの設定で使っていて特に不具合も出ていないので何となくそのまま使っちゃってます。このあたり、デバイスや環境によっては不具合が出るかもしれませんので設定の際にはマニュアルをご覧下さい。

Hardware Setup
「Switch modes with」という項目でモードを切り替えるボタンをどれにするか設定できます。私はAUTOボタンを使っていなかったのでそこに割り当てています。
モードは「Volume」「Send」「Parameters」の3つが用意されております。これはこの拡張機能独自の機能で、後述するParametersモードに切り替える際にも必要なので必ず覚えておきましょう。
Transport
トランスポートボタンの動作をそれぞれ細かく設定できます。
Navigation
4-Dエンコーダ(右側の立派なツマミ)の動作を設定できます。
上のキャプだと上下で選択トラックの移動、左右でアイテムの選択になります。
Workflow
ツマミの感度などを設定できます。とりあえずデフォルト設定で使ってます。
モードの切り替え
モードがたくさんあってややこしいので簡単にまとめてみます。

DrivenByMoss 4 Reaperインストール後、REAPERの挙動は以下の感じになります。
- DAWモード内のVolumeモードで起動する
- VolumeモードのときにAUTOキー(変更可)を押すとSendモード、もう一回押すとParametersモードに切り替わる
- 選択トラックにKomplete Kontrol(MK3鍵盤ならKONTAKTも)があると自動でPLUG-INモードに切り替わる
- PLUG-INモードに切り替わったあと、Komplete Kontrol(MK3鍵盤ならKONTAKTも)が無いトラックを選択すると自動でMIDIモードに切り替わり、DAWモードにはDAWボタンを押さない限り切り替わらなくなる
Volumeモード

ミキサー画面です。ツマミで各トラックのボリュームを変更でき、表示範囲は選択トラックに追従します。ただ画面上にボリュームの数値が出ないのがちょっとイヤであまり使っておりません。
- ツマミでボリューム変更、SHIFT+で微調整
- 4-Dエンコーダでトラック移動、左右ボタンでページ切替
- SHIFT+4-Dエンコーダ上下でVOL、PANの切替
- 上部のボタンでMUTE、SHIFT+でSOLO
Sendモード

選択トラックのセンド先一覧が表示され、センド量をツマミで調整できます。(SHIFT+で微調整)
新規にセンド先を作るなどはできません。
Parametersモード(オススメ!)

一推しのモードです!私の環境だとREAPERを起動したあと鍵盤のAUTOボタンを2回押すとこのモードに入ります。(PCモニタに通知が表示されるので分かりやすいです)
自分ってマウス(or トラックボール)のユーザーインターフェースが優秀すぎて、どんなにやる気の出そうなフィジコンがあってもマウス操作に出戻ってしまう運命(さだめ)にあると信じていたのですが、このParametersモードはついにプラグインをツマミ操作できそうだな…!と感じた仕上がり。
オススメの理由
- 選択トラック内のプラグインのパラメータを自動で表示してくれる
- 各パラメータの数値が表示される
- 表示されるパラメータの順番や内容をプラグインごとにカスタマイズできる
- パラメータはDAWで変更してもツマミで変更しても即連動
言い換えればここまでお膳立てしてもらわないとマウスから手を離す気にはなれないのです。(おまえだけかもよ…?)特に数値が確認できるのは結構便利で、プラグインのGUIは操作中にしか数値が表示されない物が多いので、これはなかなかのアドバンテージと言えるのではないでしょうか。
あとあの、LA-2Aや1176系のエフェクトはやっぱりINPUTとOUTPUTを同時に回したいですしね。うーん凄くいいです😙
FXのバイパスをトグルしたいなぁ
エフェクトを調整したあとバイパスをトグルしてエフェクト前の音と聞き比べる事が多いので、その機能もボタン等に設定できれば最高だったのですが残念ながらできません。
なので、ツマミから物理的に近い位置のキー(自分とこはF5キー)にアクティブなFXのバイパスをトグルするスクリプトを割り当てて、マウスへ持ち替えなくてもいいようにしています。
(Archie Toggle Bypass Focused FX)
Parametersモードの使いどころ
オススメしておいてなんですが、個人的にはミックス作業時以外ではあまり使っておりません。
というのも、作曲時は主にKONTAKT画面とMIDI画面が自動で切り替わるプラグインモードを使うことになり、そこからParametersモードにするにはエンコーダの上にある「DAW」ボタンを押す必要が出てきて、そうするともう「じゃあまぁ…マウスで…」になってしまうのです。とにかくマウスの利便性との戦いなのです。
結局、行き着くところはミキサー用のフィジコン、プラグイン用のフィジコン、鍵盤、鍵盤、その他…みたいにデバイスを物理的に用意するのが最強なのでしょうね💰
似たような機能があるコントローラー
詳しく調べたわけではないのですが、AbletonのPUSHに同じような機能があったと思います。最近のだとNEKTARのPanorama CS12でもできそうな雰囲気。
なにしろMIDI CCでの制御に比べると大変使いやすいです。
Parametersのカスタマイズ方法
カスタマイズしなくてもフォーカスされたプラグインのパラメータが自動で表示されますが、やはり並びなどを整えた方が断然使いやすくなります。
ここではUADxの1176AEのパラメータを設定する流れを書いてみます。
- 編集したいプラグインのあるトラックを選択し、プラグインをアクティブにする
- 拡張機能の設定 > Parametersボタン、もしくはアクション名「DrivenByMoss: Open the parameter settings window」を実行してParameter Mapping画面を出す
- AddボタンでPageを追加
- 左側のParametersから割り当てたい項目を選択、右下のparameters assigned to pageの割り当てたい位置を選択、Assignボタンで割り当て
- 4を必要なだけ繰り返して、最後に右下の「Save」ボタンを押して保存






編集したパラメータ内容はREAPERリソースフォルダの「DrivenByMoss4Reaper-ParameterMaps.ini」に保存されます。
プラグイン上のツマミの位置と物理ツマミの位置を合わせるようにカスタマイズすると直感的に操作しやすいと思います。
Pageは最大何枚までなのかな…マニュアルに記載が無いっぽいですが8か16あたりかと。でも現実的には3ページくらいが限界でしょうか。それ以上あるとさすがにマウスの方が早いわって事になっちゃうと思いますので。

関係無いけどMK3鍵盤の個人的な感想
- MK2と比べると全体の質感が向上し、液晶画面がとっても見やすくなった
- MK2では重さがまちまちだったツマミはアルミニウム製になり重さも均一、強いて言えばやや滑りやすい(乾燥肌のせいかも)
- アフタータッチは設定で感度を鈍くしても強く弾くと入力されてしまうレベル(これはアフタータッチ対応音源の増加に伴う意図的なチューニングだと思われる)
- ピッチベンドの戻りがすこーし遅い(個人的には全然問題無し)
- プレイアシスト機能(スケール・ARP・コード等)がスタンドアロンになり、ラッパープラグインが不要になったので直感的に扱える
おおむね良好。高いだけあります😇