Introduction

蒸気機関に支配され動く世界
人々は機関を崇拝し
これこそが 繁栄を享受できる唯一の手段だと信じてやまない

それが本当の幸せなのか 誰にもわからぬまま

そんな世界のどこか
誰かに知られることもなく
小さな街の片隅で
ひとりの修理工は孤独を抱えながら生きていた

彼の小さな工房の片隅には
幼い顔の機械人形

人形は機関を永久に動かし続け
止まることなく精巧に「生き」続ける
その硝子の両の目で 彼の行く末を見つめている
彼の人生を辿り 見送るかのように

工房の片隅に取り残された人形
埃をかぶりながらも 永遠に歯車を回し続ける

そこに遺されたのは
小さな慟哭と追惜と
人形が持たないはずの心に芽生えた小さな「思い」

それは愛なのか 懐古なのか 後悔なのか

今日も誰かの追慕を
世界の片隅に置き去りにしたまま
ひたすらに繁栄を願う人々の
螺子を巻く音が聞こえる